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インタビューシリーズ 第13回
先生に聞く!第13回赤堀侃司先生に聞く!
赤堀先生
プロフィール
日本教育情報化振興会(JAPET&CEC)会長
赤堀 侃司(あかほり かんじ)先生
1944年広島県呉市生まれ、東京工業大学大学院修了後、静岡県立高等学校教諭、東京学芸大学講師・助教授、東京工業大学助教授・教授、を経て、白鴎大学教育学部長・教授(2014年度まで)、現在、東京工業大学名誉教授、(一社)日本教育情報化振興会(JAPET&CEC)会長、ICT CONNECT 21会長、(NPO)教育テスト研究センター(CRET)理事、白鴎大学理事、工学博士。

海と山を行き来した幼少期

―――どのような幼少期を過ごされたのでしょうか?
赤堀先生:  私は昭和19年に広島県呉市で生まれました。故郷は瀬戸内海と山に囲まれ、毎日海で泳ぎ、山でチャンバラをする少年時代を過ごしておりました。当時は少年団(今の子供会のようなもの)があり、先輩に色々な遊び方や知識を教えて頂きました。
特に「食べ物」には、すごく興味関心を持ちましたね。昭和20年に日本は終戦を迎え、戦後の物資の乏しい中で「貧しい」のは当たり前だと感じていましたので、理科や科学というよりも、まずは食べられる木の実や果実などに意識が向いたんだと思います。
少年時代は科学工作キットが流行しました。鉱石ラジオやゴム動力の飛行機など、不器用ながらも一所懸命に組み立てました。ゴム動力飛行機では滞空時間を競う大会もあり、準優勝したのは今でも覚えています。工夫をすれば結果が良くなっていくということも、この時に学びました。
ある時、誰からかテスターを貸してもらいました。相変わらず食べ物には興味を持っていましたので、食べ物に突き刺しては、抵抗値を測っていました。これは面白かったですね。身の回りの食べものをひたすら突き刺しては自分なりの美味しさと抵抗値の関係を考えていました。今思い出すと、この体験が『数理』という学問へ進むきっかけだったかもしれません。

人が興味を持つのに年齢は関係ない

―――教員時代はどんな先生でしたか?
赤堀先生:  大学院を修了し、静岡県の清水南高校に赴任をしました。元々、教育に興味があったので、教員になれた時は非常にうれしかったです。誰でもできる実験からSSHのような発展的な課題研究まで、実験はよくしていたと思います。実験をしていて感じたことは、「実験が好きでも計算は苦手」「実験は嫌いでも計算は好き」という生徒たちがいること。その時から、理系生徒の中には実験系と理論系に分かれることを実感しました。でも共通していることもあります・・・どの子も「手を動かすことが好き」ということでした。
だから、パソコンや商業科でよく使われるそろばんを取り入れた授業を始めました。
東レ理科教育賞の受賞をきっかけに東京学芸大の海外子女教育センターに招かれ、海外の日本人学校の教育について研究を進めました。
当時、「日本の教科書は海外では通用しない」ということが問題となっておりました。海外は日本と天文や自然現象が異なるため、星座早見盤等の授業ができません。この問題をパソコンやインターネットを使って解決できないかと、研究を始めたのです。
ある時、世界7か所の小学校で同時に月の観察を行い、ネット上で議論をする授業を行いました。事前に大学生にも同じような授業をしましたが、小学生も同じ議論を始めたんです。これには感動しました!!人が興味を持つのに年齢は関係ないのだと知りました。

理科好きな子を育ててほしい!

―――先生はICT教育に熱心ですが、ICTと理科はどのように結びつけたらよろしいでしょうか?
赤堀先生:  理科に興味を持たない子に対して、いかに興味を持たせるか?という課題で、私の経験から「手を動かすこと」と「自分で仕上げていく喜びを教えること」が重要だと思います。例えばデータロガーで測定し、結果をプロットしていく。プロットした結果は一つの形を示すでしょう。考えながら手を動かすことが大切で、結果を予想しながらプロットしていくことに、意味があると思います。
また以前に、タブレットと紙の記憶に関する比較試験をしたことがあります。ポイントは鉛筆でした。タブレットでいえば、専用ペンが鉛筆代わりになります。比較試験をした結果、タブレットと紙の記憶の定着度の結果は変わらずでした。同時に行ったパソコンとマウス・キーボードでは、記憶の定着は低い結果となりました。
タブレットと紙は、学習というレベルでは似たツールだと思っております。ただ、タブレットを使うにあたっては、「手を動かすこと」を抜いてはダメだということが分かりました。ICT機器が普及しても、手を動かし、自分で結果を作り上げていく喜びを、子供たちに教えて欲しいと思います。

道具は子供に渡してほしい!

―――若い理科の先生にメッセージをお願いします。
赤堀先生:  授業は先生が一人でやっても子供は覚えません。それは感動がないからです。実験器具もICT機器も子供に渡して欲しいと思います。物を使って、子供には興味を持って欲しいです。その結果を誰もがわかるように、きれいにまとめる役割を先生が担ってください。
―――20年後には今の仕事の半分はコンピュータ化されると言われております。そうなったら人間はどうしますか?
赤堀先生:  技術を毛嫌いするのではなく、使えるものはどんどん使って欲しいです。そして、今の子供たちには、人間にしかできない『論理的思考』を育んで欲しいと願っています。
―――本日は、示唆に富む話をたくさんしていただき、ありがとうございました。


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