超電導現象
~世界最高レベルの超電導体~

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この写真はもしかして合成写真・・・いえ、違います。磁石が浮上しているんです。
えっ!磁石はくっついたり、離れたりするから、空中浮上させることなんて誰だってできるって・・・確かにそうですね。でも、磁石だけでは、このように安定した空中浮上をすることはとても難しいです。この写真の磁石の空中浮上には科学的な秘密があるのです。
そこで、この秘密を探るため超電導現象の一つである「マイスナー効果」とそれに関連した「ピン止め効果」の実験方法を紹介します。
でも、その前に、実験を行うときにとても大切な内容について紹介します。
コラム
●超電導が生まれたきっかけ
超電導現象は、オランダの大学で行われた気体ヘリウムを液体にする実験がきっかけとなり、1911年に発見されました。 物理学者カメリン・オンネスが水銀の電気抵抗が4.2K( -268.8℃)以下で消失すること発見したのです。
1933年にはドイツのカール・マイスナーとR・オクセンフェルトが、超電導体には強い反磁性があることを明らかにし、 1957年にいままでに発見された現象を数式で証明(BCS理論)したアメリカのバーディーン、クーパー、シュリーファーはノーベル物理学賞を受賞しました。
 実は、超電導をきっかけにノーベル賞を受賞された物理学者はその後も登場します。 1987年、それまでは考えられていなかった高温でも超電導現象を確認することができる物質を発見した業績した ドイツの物理学者J.ベドノルツ、スイスの物理学者K.ミュラーもノーベル物理学賞を受賞しました。
1986年彼らはバリウム-ランタン-銅系の複合酸化物で、高温超伝導の「可能性」を指摘した論文を発表しました。 タイトルは"Possible high Tc superconductivity in the Ba-La-Cu-O system", (J. G. Bednorz, and K. A. Muller. Z. fur Phys., Vol. 64, p.189?193, 1986)。 日本語にすると、超電導かもしれないという可能性を秘めた発表でした。
その可能性を秘めた発表が正しいことを超伝導を専門とする日本の研究グループの一員であった 東京大学工学部(現.科学技術振興機構理事長の北澤宏一先生)がボストンのMaterials Research Societyの特別講演で速報として発表し、 そこから、超電導物質の探求が一気に加速され、種々の超電導材料が発見されました。
●超電導になったら見えてくるものって何?
液体ヘリウムや液体窒素で超電導材料を冷却していくと、
①電気抵抗が完全にゼロになる
②磁石と反発して浮く(マイスナー効果)
③ジョンセフ効果
などの現象を見ることができます。
この性質を利用して、現在、時速500キロという磁気浮上列車が開発され、すでに人を乗せて試験走行を行うなど、 超電導を利用して、電気を無駄なく遠くまで送ったり、超高速で電力消費の少ない機器を開発する研究も活発に行われています。
では、詳しく見ていきましょう。
①電気抵抗が完全にゼロになる
超電導状態では、電気抵抗がゼロ(直流の場合)となります。抵抗がゼロの世界では、私たちの生活では当たり前のことが見れなくなるということなのです。 みなさんは、白熱電球や蛍光灯を家庭で使っていますが、明るい電球をふれたことはありますか?ふれてみると温かくなっているのに気づくと思います。
これは、ものには電流を流しやすさを示す抵抗と呼ばれる性質があります。この抵抗に電流が流れると、抵抗の大きさによって熱を生み出します。起こさずに極めて大きな電流を流すことができます。
もし抵抗がゼロになれば、熱を生み出すこともないため、大きな電流を流すことができるようになるのです。
②マイスナー効果
超伝導体の上で磁石を手離すと宙に浮上するという現象を見たことがある方は多いでしょう。
このようなことが起こるのは超電導体が磁力線を完全に外に押し出すという性質(マイスナー効果) を持つためです。 このとき、超電導体の表面に電流が流れ永久磁石の磁場を内部で ちょうど打ち消すような磁場を発生しています。
超電導体の超電導体に入り込めなかった磁力線が磁石と超伝導体の間で丸められ、 そのひずみのエネルギーに由来する力と磁石にかかる重力とがつり合うために起こります。
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●超導と超導はどちらが正しいの?
いろいろな科学用語の中でも、ちょうでんどうは2つの漢字で書くことができます。どちらが正しい用語なのでしょう? 結論から言うとどちらも正しい科学用語です。英語ではsuperconductivityと書きます。 電気抵抗ゼロで電流を流せるという現象を表す言葉として応用研究では超電導と、 基礎研究では超伝導を用いることが多いです。 ケニスでは超電導という言葉を採用しています。
●高温超電導の高温ってどのくらい?
私たちは高温と聞くと、とても高い温度で金属も融かしてしまうくらいの温度をイメージすることが多いです。 でも超電導の世界で使う高温は私たちにとってはとても冷たい世界です。
 高温といっても、現在、発見されている高温の超電導現象を確認できた温度は約-138℃です。想像もできないくらいの冷たさです。
 冷やし続けはじめて超電導現象を見せることができる温度のことを臨界温度といいます。
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用意するもの
ケニス 超電導実験器(ネオジム磁石付)1-110-0948
・液体窒素・発泡スチロール容器(冷却容器)
・プラスチック製ピンセット
・スペーサー(発泡スチロールや木材など)
・皮手袋
・保護めがね
実験方法
注意)スペーサー、ピンセット等すべての器具は非磁性のものをご使用ください。
①セッティングします
 発泡スチロール(冷却容器)、永久磁石(ネオジム磁石)、スペーサー、超電導体をセットし
 ます。
②液体窒素を注ぎます
 容器から液体窒素がこぼれないように慎重に入れてください
③十分に冷えるまで待ちます
 液体窒素の煮沸終了後、数分間程度冷やしてください
④スペーサーを取ります
 片方の手で永久磁石を保持しながらピンセットでスペーサーを抜き取ります
⑤高温超電導浮上が簡単に実現
永久磁石が超電導体の上で浮上し、回転させたり、持ち上げたりできます

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